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会長挨拶
この度、第10期(2022-2023年度)の日本保険・年金リスク学会(JARIP)会長に選出されました。皆さまのお力を借りつつ、少しでも本学会の発展に貢献したいと考えております。
2020年1月以来、この2年間は新型コロナウィルスによる感染リスクと経済リスクにさらされ、さらに2022年2月後半に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻は世界情勢を不安定にさせるとともに、カントリーリスク、インフレリスクが顕在化するなど、想定外だと思っていたことが容易に起こりうる、新たなリスクの時代に入りました。
本学会は、2003年10月に設立以来、保険数理や金融工学の研究者や実務家を中心にして、保険と金融のリスクを科学的に融合し、研究するとともにその普及を担う学会として、学術的にも実務的にも大きな役割を果たしてきました。
研究テーマも長寿リスク、健康リスク、介護リスク、サイバーリスク、自然災害リスク(地震、台風など)など、多岐にわたってきました。現在、そして今後も苦しめられるであろう感染症リスクへの対応は、経済とのバランスを考えて対処すべきことを実感させられました。しかし、多くの日本人にとって「ゼロリスク」の困難さ、科学的根拠に基づく政策提言の重要性を認識する機会となり、本学会にとっては最先端のリスク研究の成果を生かすための好機と捉えたいと考えています。
一方、実務においては、ビッグデータを活用した保険商品の開発、資産運用のためのロボアドバイザーの活用、など、新たな保険・金融サービスが開発されてきました。新型コロナウィルス対策で否応なしに、ICT の活用が急速に進み、それに伴い、FinTechやInsurTech の発展も加速するものと考えられます。それに対応するための研究手法も伝統的な統計手法に加えて、機械学習など新たな手法の活用および融合の発展がますます期待されます。今までも、経済学、統計学、オペレーションズ・リサーチ、など様々な分野の研究者に支えられてきましたが、さらに研究者のネットワークを広げ、研究の発展と普及を目指すことが必要だと感じます。
この2年間、学会活動はすべてオンラインで行われ、大きく制約を受けました。しかし、その一方で、オンラインによる活動の良さも認識することができました。これからの2年間は、オンラインと対面のハイブリッドを模索する時期になると思いますが、副会長や理事, 評議員の方々と協力し、皆様からのご意見も伺いながら、学会運営に尽力します。今後も引き続き、ご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
2022年5月
日本保険・年金リスク学会会長(第10期) 枇々木 規雄